1000年以上も昔から日本人に親しまれてきたお味噌やあま酒は、日本人の健康と食文化を守り続けてきた優れた食品といえるでしょう。また最近では、健康ブームや和食ブームにより、その価値が見直されてきています。こちらでは、あま酒について詳しくご紹介します。

あま酒について

あま酒は、「アルコールが入っているから子供は飲めない」とか「発酵臭が強くて飲みにくい」、「甘すぎて太りそう」などの先入観を持っている方、「飲まず嫌い」の方が意外と多くいらっしゃいます。米麹だけからできたかねこのあま酒は、アルコールゼロで無添加・無加糖。コクが深いスッキリした甘さで、お子様から大人の方までどなたにも飲みやすくできています。

あま酒の歴史

1.「日本書紀」の時代から

あま酒は太古の時代からわが国で飲まれていました。8世紀に著された『日本書紀』には、あま酒の起源とされる天甜酒(あまのたむざけ)についての記述があるそうです。お粥に麹を混ぜて一晩置くと発酵して甘くなったことから、古くは「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれました。

平安時代には、貴族の間であま酒の牛乳割りが流行ったとか。この飲み物が醍醐、つまり「最上の美味なるもの」の意味で、「醍醐味」という言葉もこれに関連するという説があります。あま酒が庶民に広がったのは室町時代。麹を糖化して作る甘いお酒や固形の酒粕を溶かして飲む酒ができました。江戸時代には「あま酒売り」の行商が人気を集めました。

現代のように栄養素が科学的に解明されていない時代から、人々はその経験上からあま酒の効能を実感し、暑い夏にはあま酒を好んで飲んでいたようです。そのため、今でも俳句ではあま酒は夏をあらわす季語ともなっています。

 

2.あま酒の起源は中国。そして日本へ

日本で親しまれているあま酒ですが、その起源は中国にあります。周の時代、お酒を表わす漢字は「斉(セイ)」という神を祭るための酒と、 人が飲用するための「酒(シュ)」の2種類あり、斉には「泛吹」・「醴斉」・「オウ斉」・ 「テイ斉」・「沈斉」の5種類があり、酒には「事酒」・「昔酒」・「清酒」の3種類がありました。 このうち「醴斉」は、現在のように甘いお酒で、あま酒のルーツとなっています。

日本の文献に最初に登場するのは『日本書紀』の応神天皇が吉野に行幸した時に、 古代大和の先住民(国栖・くず)が「醴酒(こざ け)」を献じたという記述です。 この「こざけ」がどのようなものかは残念ながら分かりませんが、「醴」の字をあてていることから あま酒(またはそれに近いもの)ではないかと 言われています。

その後長い時を経ながらも、健康飲料として親しまれてきたあま酒。かねこみそは原材料から製法までを頑なに守り続けています。

あま酒の作り方

1.ふた通りの“あま酒”

私たちが口にするあま酒には、ふた通りの製造方法があります。

米麹を糖化(とうか=でんぷん質を糖分に変化すること)させて作ったもの

② 酒粕を溶かして砂糖を加えたもの

どちらもそれぞれおいしいですが、本来の「あま酒」は前者です。「酒」と言ってもアルコール分は含まれていません。日本酒と原料が同じで、さらに長時間発酵させると日本酒ができるので「あま酒」という名がついたのでしょう。

②の酒粕を溶かす方法は、酒粕さえあればご家庭でも手軽に作れて便利です。ただしお酒のアルコール分が残るため お子様にはおすすめできません。

かねこみそのあま酒は、米と麹のみからつくった発酵食品で、砂糖を全く使っていません。

自然の甘みがあり、麹の力が生きています。「あま酒」という名前でもアルコールは含まれていませんので、お子様やお酒の弱い方でもお召し上がりいただけます。

 

2.あま酒床

麹で作るあま酒床は、万能麹床と言い換えることもできます。そのまま飲める、食材を漬け込む床として使える、調味料にも使えるなど使い道が豊富です。ブドウ糖が20%以上含まれ、ビタミンBミネラル食物繊維などが豊富。米のたんぱく質は、麹菌によって必須アミノ酸に変化するなど。昔から夏場の健康食として親しまれてきたのにもうなずけます。 美容や健康にとても効果的と言えます。

50~60℃という温度で作るので、麹に含まれる酵素は元気なまま。野菜や刺身を漬けて生で食べれば、活動中の酵素を体に取り入れることも可能。酵素のおかげで潜在酵素を少ししか消費しなくてすみます。発酵物の中でも、納豆とあま酒だけは塩を使わないので、塩分を控えたい人にもおすすめです。時間がたって酸味が出てきてしまっても、塩と食用油を足せばドレッシングとしても使用可能です。

参考:『「発酵食堂 豆種菌」の麹の料理』 伏木 暢顕(日本文芸社 出版)より抜粋

あま酒は夏の飲み物?

近年は、あま酒は冬の飲み物というイメージが強かったですが、古代日本の宮中では、旧暦で夏の始まりとなる4月1日、中近世になると6月1日に、あま酒を飲むのが儀礼行事となっていたそうです。

昔の日本では、夏に伝染病で亡くなる人が多かったので、暑い季節を迎えるまえに薬膳のひとつとして発酵食であったあま酒を口にしたのでしょう。江戸時代末期の“守貞漫稿(もりさだまんこう)”という町の様子を書いた本には、ふんどし一丁であま酒を売る行商人の絵があり「夏月専ら売り巡るものは、醴(あまざけ)売りなり。専ら六文を一碗の価とす」と記されています。

あま酒にはブドウ糖ビタミンB必須アミノ酸類などが多く含まれ、夏バテ防止のための栄養補給には最適の飲み物と言えます。

東京史楽:史文社 「続・江戸の話」より

まずは甘酒売。『守貞謾稿』の記された頃には、江戸では四季を問わず飲まれたものらしいが、関西では夏の飲み物であるという。

「醴(あまざけ)売也京坂は専ら夏夜のみ売之専ら六文を一椀の価とす江戸は四時ともに売之一椀価八文とす蓋其扮相似たり唯江戸は真鍮を用ひ或は銕(てつ)釜をも用ふ銕釜の者は京坂と同く筥(はこ)中にあり京坂必ず銕釜を用ゆ故に釜皆筥中にあり」とあり、一杯八文。夏に売られた甘酒が、冷たいものであったのか、それとも温められたものであったのかは分からないが、釜を用いるのであるから、恐らくは温かいのであろう。

あま酒の栄養価

エネルギーの元である ブドウ糖、体の機能を調節するビタミン、体を作るもとになるアミノ酸、この3つが豊富に含まれる あま酒は「飲む点滴」と言われるほど栄養価の高い飲み物です。

 

「アミノ酸がからだを作る」

あま酒には、アミノ酸が豊富に含まれます。米の表面にはたんぱく質が多く、そこに麹菌が増殖すると、たんぱく質分解酵素を出して分解し、アミノ酸に変わります。人間の身体を構成する約20種類のアミノ酸のうち、9種類は食事からとるべき『必須アミノ酸』。あま酒はこの9種類の必須アミノ酸を網羅して、さらに他のアミノ酸も摂取できる、「スーパーアミノ酸飲料」なのです。

 

「ビタミンがからだの機能を調節する」

あま酒には、糖質・脂質・蛋白質の代謝に必要なビタミンB群が豊富です。麹菌が繁殖するとき、ビタミンB1B2B6B12パントテン酸イノシトールビオチンなどすべての天然型吸収ビタミン群を作って米麹に蓄積され、そのまま、あま酒の成分となっています。つまり、あま酒は、市販のビタミンB補強サプリよりも手軽でおいしく栄養を摂取できる「滋養ドリンク」といえるのです。

 

「ブドウ糖がエネルギーの元となる」

あま酒には、ブドウ糖が20%以上も含まれます。体内に入ったブドウ糖はすぐにエネルギーとなって使われます。あま酒を飲むことは、病院で点滴(ブドウ糖+ビタミン溶液+アミノ酸溶液)で栄養を補給するのと同じこと。それゆえにあま酒は「飲む点滴」とも言われています。

 

「食物繊維とオリゴ糖が腸内環境を整える」

あま酒は、麹に由来する食物繊維とオリゴ糖が腸内環境を整えるので、体内の有害物質の排出に役立ち、便秘肌荒れなどを予防・改善します。この働きにより、あま酒は欧米から「ジャパニーズ・ヨーグルト」とも呼ばれています。

 

「酵素分解物質で高血圧の予防」

あま酒には、ペプチドたんぱく質を酵素で分解してできる物質の一種である「アンギオテンシン変換酵素阻害物質」が含まれます。この物質は、天然の降圧剤として高血圧症の人に効果があると言われています。

 

「酵素のはたらきでお腹にやさしい」

平安時代の貴族の間で「あま酒の牛乳割り」が流行ったと言われています。この飲み方が「醍醐」、つまり「最上の美味なるもの」と呼ばれ、「醍醐味」という言葉もこれに関連するという説があります。あま酒が牛乳と混ざることで、まろやかでコクのある甘さになり、あま酒に含まれる酵素が牛乳の乳糖を分解して吸収を促し、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするという人も安心できる飲み物となります。

参考:「発酵は力なり」小泉武夫(東京農大教授 NHK出版)